シャトーリリアーラ 更生工事の後、直結給水切替
【工事内容】
1) 既存配管内の錆を磨き特殊塗料でコーティングする更生工事
2) 受水槽・加圧給水ポンプを必要としない直結給水方式への切替
3) 水道本管からの引込管増径工事(水道局施工)
【住宅形態】
RC造 6階建 35戸
受水槽(約12㎥) 加圧給水ポンプ有り 高架水槽無し
既存水道引込管40mm
水道本管最小動水圧0.28MPa
【築年数】
約30年
【工事金額】
約1200万円
【施工時期】
2021年9月~2021年10月 (約2ヶ月)
代表渡邉です。今回は私がコメントさせていただきます。
シャトーリリアーラのオーナ様とは消防団時代にお付き合い合ったのですが私が退団後はお目に掛かる機会も少なくなっておりましたが、受水槽に問題があるとの御連絡を頂き調査してみたところ、受水槽の上部パネルの継ぎ目が壊れて中の水が外から見える状態でした。
衛生上の問題を回避するため応急的な補強と養生を行い直結工事と赤水対策の配管更生工事(ライニング工事)をお勧めさせていただきました。
建物は築30年弱と給水管内に多くの錆が発生している可能性があり、給水管内を研磨し錆等をキレイに清掃し特殊な塗料でコーティングする更生工事を施工いたしました。
弊社代表が開発に携わった流量計算のソフトを使用し計算した結果、今回の建物は一部6階がありますが、増圧ポンプを設置せず水道本管からの水圧のみで給水する特例直圧給水方式への変更が可能と判断し施工いたしました。
【工事メリット】
1.受水槽を介さなくなる為、浄水場からの新鮮なお水を直接使用する事が可能となる
2.受水槽を介さなくなる為、受水槽や給水ポンプ・内部清掃等の維持管理費用が必要なくなる
3.ポンプが不要となった為、電気代などの維持管理費用が必要なくなる ここはエレベーターがあるので動力の撤去までには至りませんでした
対象住戸全戸施行を目指し工事説明会を2回いました。
弊社では工事内容やご希望に応じて工事説明会を実施しております。
さて!工事に入ります 問題の受水槽から
受水槽…アレなんだか上の方が口が開いている
登ってみるとパネルの組み立てボルト部分が強い力で引きちぎられたように口が開いてました
とりあえず虫や埃が入らないようにガムテープなどで塞いだ後、チェーンとターンバックルでこれ以上口が開かないように補強した上で、上部をシートで覆い、ロープでしっかり固定しました。
配管更生と直結切替の見積を作成してOKですを頂きました
更生工事については更生後の水質検査で有害物の漏出などがないことが確認されないと直結できないため、一旦直結にしてしまうと、仮設で一旦受水槽を設置しないと更生工事が出来なくなってしまいいます。
【直結にしてしまった場合の更生工事(ライニング工事)の手順】
1)直結方式から仮設受水槽加圧給水など受水タンクを経た方式に仮に切替
2)配管更生工事
3)水質検査の上合格
4)直結に再度切替
と大変面倒になりますのでまずは更生工事から始めました。
配管更生工事(ライニング工事)とは配管の中を研磨砂を圧縮空気と一緒に流して研磨してその後塗料を同じく圧縮空気で流して塗装して、配管内部を更生させる工事です。大がかりな仕事ではありますが交換や更新工事に較べて内装を傷める必要が無いため住民の負荷などが大幅に低減されます。寿命も10年と言いますが実際はもっと長く、再ライニングも可能です。
ただし余り腐食等が進行しすぎると研磨により配管に穴が空くなどが生じるため築後35年位が一つの目安と言われています。
事前水圧試験から始めます
直結にする為には事前に直結になる部分を0.75Mpaの水圧をかけて漏水などがないことを確認しなければなりません。
全住戸を対象に水圧試験を行います。
ライニング工事開始です
まずは仮設の給水管を設置する所から始めます。
廊下の内外に配管をします。
狭いパイプシャフトで奥に給水配管がありガスメーターがあって施工が難しいところは仮設でガスメーターを移設しました。
まずは配管ヘッダーから各水栓系統にホースを結びます、そしてメーター部分に空気が戻るようにします。
そして、空気を送って配管の内部を乾燥させます。
ホースがたくさんあるので床などには養生を行います。
ホースがたくさんあり、つまずいてはいけません 養生をしていきます。
水回りの水栓ごとにホースを結ぶので一部屋に5本6本とホースが伸びます。
研磨剤(粒のそろった角のとがった砂状の物)です
研磨材を投入機の中に入れていきます。研磨材入れますよー研磨材投入中
研磨材投入中
圧縮空気と一緒に各系統ごとに研磨材を流して研磨します。回収状況は回収回路の透明のホースを通り確認できます。
行き戻りの圧力を見ながら研磨剤の投入を段階的に行います。
行き戻りの圧力差が少なくなると研磨完了です。
研磨を各系統切替ながら行います。ヘッダーのバルブで系統の切替をしています
塗料を注入していきます 注入用の配管に塗料を流し込み、その後圧縮空気ホースをここに取付て塗料を配管内に塗装します。
回収側の透明ホースに余った塗料が出てきたらその系統の配管の中に塗料が塗られたことが確認出来ます。
あとは塗料の硬化を待って乾燥換気で空気を通し翌日の午前中まで十分な硬化を待ちます。
この間が部屋では仮設蛇口一つだけしか使えません。
完了後に水質試験を実施して塗料成分などの漏出が無いことを確認しライニング工事は終了です。
他現場の資料ですが更生開始前・研磨後・更生後の具合はこんな感じです。
更生工事その他の作業風景例です 大型のコンプレッサーが必要です。
更生工事 更生前・研磨後・ライニング後の実際例
いよいよ直結切替工事
更生工事が完了したのでいよいよ直結に切り替えます。
今回は特例直圧給水方式となる事から既存の加圧給水装置は撤去となります。
基礎のコンクリートは残置です。
既存建物給水管と新規直結給水管を結びます。フランジ接合としてフランジ部分はポリフィルムで覆い防食します。
新規鉄管部分も距離が短いため内外塩ビライニング鋼管VDだと取り回し難しいので塩ビライニング鋼管VBにて配管後、プラスチックテープを巻いて防食しました。新規給水管は腐食と変位強度に大変強いポリエチレン管 セキスイエスロハイパーAWにて配管しています。継手は全て溶着なので大変に強度が強いためお勧めです。地方では鋳鉄管でなくポリエチレン管を本管に使用しているところも増えています。鋳鉄管より大幅に安いためです。あと、ガスの道路本管も最近ではポリエチレン管に置き換わっています。
メーターバイパスユニット回りなどの配管です。青い管がエスロハイパーAW
給水本管よりの引き込み管を40ミリから50ミリに増径しています。 水道局で直結化の際には無償で増径工事をしてくれます。
埋設配管はSUS316の波状管が使われています。腐食にも変位にも強いので現在の都内の埋設管の仕様になっています。
新規メーター回り 右側白いマスの中にナイロンコーティングスモレンス逆止弁が入っています。
以上で直結工事部分は完了です。
※青い配管が今回使用した管材【エスロハイパーAW】となっています。
○この配管材のメリット○
1)錆びることのない高性能ポリエチレンを使用しており、赤水の心配がありません。
2)管体独自の可とう性と電気融着により地震に強い一体感路を構築。30cmの強制変位にも耐えられます。
埋設配管では、2003年宮城県北部地震、2004年新潟中越地震、2007年新潟中越沖地震で被害件数がゼロという非常に地震に強く腐食もしない管材となっております。
エスロハイパーAW 性能試験
※積水化学工業株式会社
「建物配管用エスロハイパーAW」 カタログより抜粋
最後に撤去工事を行います
受水槽撤去の中に入ったところ受水槽の上部をつなぐバーが有るのですがこれが破断しておりました。
地震などの大きな力が加わって破断したのでは無いかと思われます。2011年3月11日は相等揺れましたのでこう言った部材も破断してしまったのかも知れません。
昔は水平震度0.5G規格でしたが今では受水槽も1G以上になっています。
受水槽を撤去した後はきれいに砂利敷きにしています こちらのマンションは駐輪場も十分有りますので必要ありませんが場合によっては駐輪場や駐車場にする事も出来ます。
不要となった電気回路は端子から切り離しして端末処理します。
電気盤などは回路をきちんと分離して警報関係も残らず撤去が必要です。
また、撤去した回路には撤去した旨の表示も必要です。
水道局の完成検査を受けて工事は完了です。
工事前と工事後の各部屋の水圧も大きく変化する事なく、また、受水槽の問題発覚から短期間で理想のかたちに給水方式も最良の方式に変わってオーナー様も大変満足されていました。